ノート

　リチュリンが約束を守ってワインをもらってきてくれた。
　恥をかいてまでもってきてくれた。素直にうれしかった。
　リチュリンはイイコだ。
　腹黒いとか、イイコじゃないとか言っているが、少なくとも、政治家よりは白いと思うぞ。
　やたらと目潰しを主張していたが、世間一般では目潰しするような元気のある子より、何もしないゴクツブシのほうがよっぽど悪い子だと思うし。
　いや、目潰しはかなり悪い行為か。まあいいや。

　チェスパニアとの和平は本当に見事としかいいようがない慶事だ。国を挙げて祝ったほうがいい。
　戦った人たち、お疲れ様でした。グッジョブでした。

　年若い子と話をする機会があまりないので、新鮮な気持ちで話することができた。
　ただ、できればあまり、近寄らないでほしい。
　自分は今、汗臭いんじゃないかとか、目やにがついていなかったかとか、日ごろ気にならないことが妙に気になって仕方がないからだ。
　それと、いかにも若い人間の前に立つとだ、とたんに老け込んだような気持ちになる、あの感じはいったいなんなのだろう。
　思わず自らのことをオッサンと呼ばわってしまった。
　そしてまた、リチュリンも「そんなにオッサンじゃないよ」とは、言わなかった。
　俺はオッサンなのだ。
　それは衝撃だった。俺がオッサン？
　オッサンだと思えば思うほど、年の若い、それも女の子と相対すると、「クサイ」とか、「キモイ」とか、・・・そんなことを言い放たれてしまうのではないかと、気が気じゃなくなる。リュオ相手のときにも、似たような危惧を抱いたような気がするが・・・。
　そんな気がなくても知らぬ間に、「死ねロリコン」といわせる気持ちの悪い何かを発信しているかもしれない。
　オッサンとはそういう生き物だ。
　そういう生き物に、なってしまった。
　俺はオッサンなのだ。
　リチュリンにメシをおごりながら、ずっとそのことを考えていた。オッサンか・・・。