2024 .05.15
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頭の中は波の音に支配されている。だからなのか気がつくといつも、ボーッとしている。
持ってきた酒は二日で飲みきった。金のかかるコテージを出て、昔のように島の中を移動している。寝床はその都度探す。
八月を前に賑わい出した島の中の、出来る限りの人気のないところを選んで寝転がり、あと七日間ほどの滞在で、悔いが残らないようにしたい、と、考えている。
悔いが残らない滞在とは何なのかわからない。
今はただ、島の中をくまなく歩き回り、島のものを食べて、島の一部のようになれたら。
…なれたらなんだというんだろうか?
考えがうまくまとまらない。
今も波の音が聞こえている。
持ってきた酒は二日で飲みきった。金のかかるコテージを出て、昔のように島の中を移動している。寝床はその都度探す。
八月を前に賑わい出した島の中の、出来る限りの人気のないところを選んで寝転がり、あと七日間ほどの滞在で、悔いが残らないようにしたい、と、考えている。
悔いが残らない滞在とは何なのかわからない。
今はただ、島の中をくまなく歩き回り、島のものを食べて、島の一部のようになれたら。
…なれたらなんだというんだろうか?
考えがうまくまとまらない。
今も波の音が聞こえている。
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物乞い。オークション。
トリノが言っていた冒険者の仕事だ。これなら俺でもできそうだ。
さて、日記を書いている今、俺は船に乗っている。
こんな大きな船でSEAに向かうことになるとは思わなかった。おかげで予算が一気になくなってしまった。もっと前から計画をしていれば安上がりに済んでいただろうに、馬鹿なことをした。俺はバカだ。
SEAへ行くのは本当に久しぶりだ。何年ぶりだろう。意図的に近寄らないようにしていたのもあるが、今ならいけるような気がした。サザのおかげだ。
かつて我が物のように生活していたSEAを、今の俺が入ってみてどう思うのか。そういうものを確かめてみたかった。
しかし実際はチケットを購入する時点でSEAに人がなだれ込みそうだという予測がつき、少しがっかりした。俺がSEAに居たころは、冒険者の数は少なく、穏やかだったから、人でにぎわっている可能性を考えていなかった。でもそうだよな、夏だし、みんな海で遊びたくなる頃合だ。ジョーも行きたくなるわけだ。サザもいくといってたな。
ジョーはフォシルと・・・おそらくはもう何人かの友人と、SEAへ行く予定なのだという。
このフォシルという娘が実にぐいぐい来る娘で、・・・いや、ぐいぐい来るといえばジョーもなんだが、方向性の違うぐいぐいで、終始ペースを握られていたというか、俺はすっかり調子を狂わされてしまった。次に顔を合わせたとき、どんな顔をして会えば良いのか分からない。ああくそ、忘れて欲しい。今日あったことは何もかも。
トリノが言っていた冒険者の仕事だ。これなら俺でもできそうだ。
さて、日記を書いている今、俺は船に乗っている。
こんな大きな船でSEAに向かうことになるとは思わなかった。おかげで予算が一気になくなってしまった。もっと前から計画をしていれば安上がりに済んでいただろうに、馬鹿なことをした。俺はバカだ。
SEAへ行くのは本当に久しぶりだ。何年ぶりだろう。意図的に近寄らないようにしていたのもあるが、今ならいけるような気がした。サザのおかげだ。
かつて我が物のように生活していたSEAを、今の俺が入ってみてどう思うのか。そういうものを確かめてみたかった。
しかし実際はチケットを購入する時点でSEAに人がなだれ込みそうだという予測がつき、少しがっかりした。俺がSEAに居たころは、冒険者の数は少なく、穏やかだったから、人でにぎわっている可能性を考えていなかった。でもそうだよな、夏だし、みんな海で遊びたくなる頃合だ。ジョーも行きたくなるわけだ。サザもいくといってたな。
ジョーはフォシルと・・・おそらくはもう何人かの友人と、SEAへ行く予定なのだという。
このフォシルという娘が実にぐいぐい来る娘で、・・・いや、ぐいぐい来るといえばジョーもなんだが、方向性の違うぐいぐいで、終始ペースを握られていたというか、俺はすっかり調子を狂わされてしまった。次に顔を合わせたとき、どんな顔をして会えば良いのか分からない。ああくそ、忘れて欲しい。今日あったことは何もかも。
今夜SEAへ行く。
その前に、請けていた仕事は全てこなしておこうと思い、後一件で配達完了だ、・・・と思ったらまさかの不在ときた。
太陽は西に落ちてきているものの、太陽光をたっぷり吸い込んだ噴水広場の石畳からの熱気で、外の気温は正午のそれを超えているように感じる。
本当なら家に帰って翌日出直すところだが、俺には明日が無い。チケットも買ってしまった。
帰ってくるのを待つしかない・・・。
怒りと暑さに朦朧としていると、アナイアが紅茶をくれた。舌先に柑橘系のものを感じたが、味わう余裕はなかった。
自分で飲むためのレモンティーを差し出してくれたアナイアは、俺が暑さにへばっている隣で凛としていた。
随分情け無い話である。なぜ同じ人間でこうも違うのだろう。アナイアは汗ひとつかいていなかった。慣れているといっていたが・・・信じられない。
ところで彼女は自警団だった。いかにも冒険者という身なりだったため油断した。腕章を見たときは悲鳴が出そうだった。
しかし、自警団と聞くだけで鳥肌が立つほど、自警団が苦手な俺が、アナイアとは普通に会話できたのは、彼女が話を聞くのがうまく、俺を「なんとなく怪しい」という理由だけで捕らえる輩とは違っていたからだろう。穏やかな余裕すらあった。
自警団の見方が少し変わった。笑えば普通の女性と同じにやさしい表情をしている。
涼やかな気分にさせてくれる、そんな人だった。
その前に、請けていた仕事は全てこなしておこうと思い、後一件で配達完了だ、・・・と思ったらまさかの不在ときた。
太陽は西に落ちてきているものの、太陽光をたっぷり吸い込んだ噴水広場の石畳からの熱気で、外の気温は正午のそれを超えているように感じる。
本当なら家に帰って翌日出直すところだが、俺には明日が無い。チケットも買ってしまった。
帰ってくるのを待つしかない・・・。
怒りと暑さに朦朧としていると、アナイアが紅茶をくれた。舌先に柑橘系のものを感じたが、味わう余裕はなかった。
自分で飲むためのレモンティーを差し出してくれたアナイアは、俺が暑さにへばっている隣で凛としていた。
随分情け無い話である。なぜ同じ人間でこうも違うのだろう。アナイアは汗ひとつかいていなかった。慣れているといっていたが・・・信じられない。
ところで彼女は自警団だった。いかにも冒険者という身なりだったため油断した。腕章を見たときは悲鳴が出そうだった。
しかし、自警団と聞くだけで鳥肌が立つほど、自警団が苦手な俺が、アナイアとは普通に会話できたのは、彼女が話を聞くのがうまく、俺を「なんとなく怪しい」という理由だけで捕らえる輩とは違っていたからだろう。穏やかな余裕すらあった。
自警団の見方が少し変わった。笑えば普通の女性と同じにやさしい表情をしている。
涼やかな気分にさせてくれる、そんな人だった。
一人きりで深夜、釣りを楽しんだ。
鰯狙いでサビキ釣り、ザ!ファミリーフィッシングという感じのあれだ。家族とかおらんけども。
俺は釣りを、何かの修行のように楽しむつもりはない。その日食べるものの足しになれば、何が釣れても嬉しいし、美味しく食べられる自信がある。
やはり、海賊時代にSEAに引きこもっていたことが、この楽しみの少ない釣り方に、大きく影響しているように思う。
リリースなんてしない。絶対に。それは今も昔も変わらぬ俺のスタイルだ。
ただ、釣りをしながら思いに更けるようなことは、過去になかった。
俺は色々考えた。釣りをしながら鰯の調理法やら、明日の仕事のことなどを。
そして海賊だった頃のことも。
ヒバリやカロリナに助けられ、ショーシャンナの住まいが気に入り別室に部屋を借りた。カシマと再会し、サムサラ様に親しくしていただいた。ラスやジョーにからかわれ、リュオと友人になり…サザと仕事を続けている。
こんな日々がくるなんて思いもしなかった。
ただ、いまの俺とは違う俺もまた、確かに存在する。
そいつは真っ暗な海の水底深くに沈んで、俺に釣り上げられる日を待っている。
鰯は五匹釣れた。
鰯狙いでサビキ釣り、ザ!ファミリーフィッシングという感じのあれだ。家族とかおらんけども。
俺は釣りを、何かの修行のように楽しむつもりはない。その日食べるものの足しになれば、何が釣れても嬉しいし、美味しく食べられる自信がある。
やはり、海賊時代にSEAに引きこもっていたことが、この楽しみの少ない釣り方に、大きく影響しているように思う。
リリースなんてしない。絶対に。それは今も昔も変わらぬ俺のスタイルだ。
ただ、釣りをしながら思いに更けるようなことは、過去になかった。
俺は色々考えた。釣りをしながら鰯の調理法やら、明日の仕事のことなどを。
そして海賊だった頃のことも。
ヒバリやカロリナに助けられ、ショーシャンナの住まいが気に入り別室に部屋を借りた。カシマと再会し、サムサラ様に親しくしていただいた。ラスやジョーにからかわれ、リュオと友人になり…サザと仕事を続けている。
こんな日々がくるなんて思いもしなかった。
ただ、いまの俺とは違う俺もまた、確かに存在する。
そいつは真っ暗な海の水底深くに沈んで、俺に釣り上げられる日を待っている。
鰯は五匹釣れた。
この歳になるともう、子供の頃の記憶なんて他人のことのように曖昧だし、思い出すこともない。
ただそれは夢という形で不意に現れることがある。過去の夢を見て、暖かな気持ちになれることは稀だ。
”一番最近子供だった時の記憶”が夢となる場合は特に、本当に子供だった頃の記憶とは違い、純粋な恐怖の体験として現れる。心細いということが、あんなに恐ろしいことだとは知らなかった。子供になってしまった頃のことはもう殆ど覚えていないのに、あの時の恐怖や寂しさは今でも俺の心の何処かに染み付いているらしい。
カロリナは子供に戻り、記憶も無くしてしまった俺に、親切にしてくれた人のうちの一人だ。
金色の髪の毛に、蜂蜜やひよこの体毛などを連想していたことは彼女にはまだ伝えていない。
明るくて可愛らしいもの。そんな暖かな印象のあるカロリナが笑うと、とても気分が良かった。心強かったのだ。
身寄りのない不安の中、子供の頃の俺は彼女に母親を思っていたのかもしれない。
大人の姿に戻り再開した際、覚えていられたことは本当によかった。
久しぶりの邂逅を喜び一緒に酒を飲みに聖堂から山を下った。
ただ、なんだか妙な気分だった。俺のほうが彼女より背が高くなってしまっていることや、年をとってしまっていること。
それもじき慣れるだろう。
ところで俺の母親は黒髪でパンチかと思うぐらいきつめのパーマがかかっているし、絵にかいたような中年体型であるため、カロリナとは似ても似つかぬ容姿である。最近のお気に入りはマグロの中落ちだそうだ。今度は東洋人の男と付き合っているのだろうか。
ただそれは夢という形で不意に現れることがある。過去の夢を見て、暖かな気持ちになれることは稀だ。
”一番最近子供だった時の記憶”が夢となる場合は特に、本当に子供だった頃の記憶とは違い、純粋な恐怖の体験として現れる。心細いということが、あんなに恐ろしいことだとは知らなかった。子供になってしまった頃のことはもう殆ど覚えていないのに、あの時の恐怖や寂しさは今でも俺の心の何処かに染み付いているらしい。
カロリナは子供に戻り、記憶も無くしてしまった俺に、親切にしてくれた人のうちの一人だ。
金色の髪の毛に、蜂蜜やひよこの体毛などを連想していたことは彼女にはまだ伝えていない。
明るくて可愛らしいもの。そんな暖かな印象のあるカロリナが笑うと、とても気分が良かった。心強かったのだ。
身寄りのない不安の中、子供の頃の俺は彼女に母親を思っていたのかもしれない。
大人の姿に戻り再開した際、覚えていられたことは本当によかった。
久しぶりの邂逅を喜び一緒に酒を飲みに聖堂から山を下った。
ただ、なんだか妙な気分だった。俺のほうが彼女より背が高くなってしまっていることや、年をとってしまっていること。
それもじき慣れるだろう。
ところで俺の母親は黒髪でパンチかと思うぐらいきつめのパーマがかかっているし、絵にかいたような中年体型であるため、カロリナとは似ても似つかぬ容姿である。最近のお気に入りはマグロの中落ちだそうだ。今度は東洋人の男と付き合っているのだろうか。